最近よく聞く「食育」ですが、そのごくごく基本はあまり知られていません。文部科学省でも『食育で身につけること』として推奨しているものがありますが、これだけではあまり効果がないのです。

この画像によると、1番目に「食べ物を大事にする感謝の心」とあります。感謝の心はあなたを幸福にします。幸福だから感謝をするのではなく、感謝をするから幸福になるのです。なので、これについては同意します。ですが、どうしたら深い感謝ができるのでしょうか。実はそこが抜け落ちているのです。
食べる時にイメージをする

そこで、深い感謝に結びつく食育をお伝えします。私のお勧めです。ぜひ、食事をしながら想像してみてください。
- ①その食事を作ってくれた人(あなた自身、家族など)
- ②その食材を売ってくれた人(スーパーなど)
- ③その食材を運んでくれた人(運送会社はどこでしょう?運転手さんはどんな人?車はどこを通った?安全に運ぶために信号や道路を整備した人は?)
- ④その食材を生産してくれた人(農家さん、漁師さん、酪農家さん)
- ⑤その食材はどうやって育ったのか(太陽の光を浴びて、土にいる微生物の働きによって有機物が分解されて野菜が吸収でき、成長できた。海にたくさんの小魚、海藻などが育ち、それをエサにして育った。etc.)
- ⑥その食材が育つには何が必要だったのか、どんなシステムなのか(畑に栄養分を運ぶために、豊かな森と汚染のない河川が必要。海や植物からの水分の蒸散作用による循環が水分を与えてくれた。
- ⑦そして、そのシステムが今、どうなっているのか、健全に保つためには何が必要なのか。自然生態系のシステムについて(森は放置人工林が増え、その結果、海や陸にミネラル分が運ばれなくなり、魚が減っている。畑砂漠化が進み、土壌流亡、栄養分が不足し、野菜自体の栄養分が減ったと言われている。それを補うために海外から化成肥料を輸入し、それが現地の環境を破壊した。近年はその肥料が高騰し、2023年には多くの農家さんが赤字になり、食糧危機が起きるとの指摘がある。耕作放棄地を買いあさる外資などの問題。それがなぜ解決されないのか、政治と国民の意識の問題etc.)
ザックリと書くだけでもここまで意識が広がります。ただ単に、作ってくれた人、農家さんに感謝するだけでは食育の効果はあまりないのです。
上の画像(文科省HPからの画像)の6番めに「地域の産物や歴史など食文化の理解など」と書かれていますが、あまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。もしこれも考えを及ばせれば、地産地消を基本にした露地栽培にいきつくでしょうから、旬を無視したハウス栽培は除かれていきます。とすると、クリスマスケーキにイチゴは乗らなくなります。多くの地方では、露地栽培のイチゴ(一季なり)の旬は初夏だからです。また、地形や上記⑦に書いた自然生態系のシステムを考えることにもなります。

また、「地域の産物」を考えれば、在来種(ご先祖様が代々自家採種をして、現在まで受け継がれてきた野菜の品種)の野菜を食べることになるでしょう。ですが、現在流通している野菜などの多くはF1種という一代交配種です。種をとって蒔いても、親と同じものが育ちません。なので自家採種をせずに毎年種を種屋さんから買うのです。これが、モンサント社など一部の巨大な種苗会社が、地球上の種、食糧、ひいては人間の生命を支配していると言われている問題です。
現在は在来種は自家採種ができますが、それを使うと、育ち方がバラバラなので、機械による一斉収穫ができず、大量生産型の今の農業では困難です。そこで農家さんにとってもF1種は都合がいいのです。
安全な食べ物は今のシステムでは生まれない
一番大事なのは⑦です。画像にもあるとおり、私たちは「安全な食べ物」をどうやったら生み出すことができるのかをあまり知りません。ただ、農家さん任せです。でも農家さんの数はかなり少なく、販売農家102万戸で一億人分の食べ物を作っているのです。

大量生産が私たちを苦しめる

農家さんは、人手が足りなさすぎるために、機械化しています。自然生態系のシステムを活用した旧来の農法では間に合わないので、化学肥料を使っています。その結果、微生物の多様性が失われているので病気や虫に悩み、農薬を使います。単一の連作(トウモロコシ畑ならばトウモロコシだけをずっと植え続ける)なので連作障害が起きるため、微生物資材を買って投入したりもします。でも、燃料や肥料の価格は高騰したのです。
大型機械を使えば土壌が圧を受けて耕盤層ができます。耕盤層ができると作物がよく育たなくなります。そこでソルゴーなどのイネ科を植えて耕盤層の破壊をします。ずっとそうやって土をいじっているので、微生物層(表土から15cmくらいの微生物が増殖している層)ができず、土が土壌へと団粒化するのを妨げます。団粒化しないと作物の育ちがよくありません。そこでまた微生物資材などが必要になります。農業にはこうやってお金がかかるので、その分、食料はどんどん値上げが必要になります。大型機械の購入費、メンテナンス費用もかかります。その割には儲からないので農家のなり手が少ないのです。
大型機械で耕し、種を蒔くのですが、収穫時も大型機械で行います。その時に雑草が混じると手作業をしなければなりません。そこで、雑草だけを枯らすように作物の遺伝子を組み替えて農薬に耐性を作り、除草剤を一気に蒔いて雑草だけを枯らしてから収穫します。
そういう土壌の成分が地下水を通って川に流れ、やがて海に流れていきます。川や海は汚染されます。汚染された海で育った魚を私たちは食べていますし、魚自身にも迷惑な話です。下流域に住む人にも影響があります。

農薬、化学肥料、遺伝子組み換えやゲノム編集、食料の高騰、土壌汚染、海の汚染、人と動物と植物の病気、全般的な環境破壊、生物の絶滅や多様性の欠如、それらの問題が引き起こす人間の減少と絶滅の危機。すべてはつながっているのです。
食育とは、そういうことを知ることであり、考え、対策や解決策を講じ、実践して広げていく、そういうことではないでしょうか。

大量生産が地球を破壊しています。食の危機を叫ぶ人は多いですが、自分で作っていない人も散見されます。でも、この問題は、農家さんが引き起こしているものではありません。農家さんは、私たちが担当しなければならない分まで背負ってくれているのです。私たちは、少しずつでも手分けをして、みんなが自分の分を自分で作らなければ解決しないのです。言うだけで自分は何もしないのだとしたら、イジメをするなと批判しながらも自分もイジメているのと同じことで、これでは言動が不一致なのです。
脱人間、人工人間、水槽の脳

そろそろ私たちは、自分達がやってきたことの責任を引き受けなければならない時期です。そのきっかけがコロナです。スマート農業は、これまでの慣行農法(戦後に普及した現代の農業)よりかはいいと思いますが、「地球に生えていない食べ物」を生産することも含まれます(屋内の植物工場)。露地栽培であっても、ロボットに収穫を手伝ってもらうくらいならいいと思いますが、化学肥料、農薬を使って耕起を続けていけば土壌はどんどん壊れていきます。植物工場での栽培は地球(土)につながっていません。人工光を受け、培地の上で点滴のような栄養分をもらって成長するだけです。人間で言えば、室内の照明をつけ、食べ物を食べずにサプリメントや点滴だけで生きているのと同じことです。だから臓器があまり要らなくなっていきます。これは脱人間と言えるのではないでしょうか。

この地球上で地球(土)につながっていないものはありません。近年の人間は靴を履き、建物を建てて土から断絶された生活をしていますが、本来は私たちも土につながっていたのです。でも私たちは、不自然な問題を解決するために、またもや不自然な方法を選択しようとしています。
メタバースは人工世界です。そんな世界に生きたいと思う人などいるのかと言われましたが、実は自らそんな人工的な世界へ進んでいる人もいるということです。人工化した肉体にもメリットがあるでしょう。プラスチック化した体は劣化や腐敗に強く、これはこれで、極めると不老不死が実現するかもしれません。手足が要らず、脳だけでひとつの世界を体験することが可能なので、実に効率的だとも言えるでしょう。いずれは水槽の脳が実現するかもしれません。

ともあれ、自然なものを食べ、自然に生きていくのか、それとも人工的なものを食べて人工的に生きていくのかは、すでに私たちが自由に選択しているのだと思います。

まとめ

さて、食育のお話に戻しましょう。人工人間はあまり環境への負荷をかけなくなりますが、それが実現するのはまだ先でしょう。気候変動だけでなく、地球の病を急いで治さなければなりません。私たちの栄養源である水も食べ物もすべて地球が生み出してくれているからです。地球のシステムが破壊されれば人間も絶滅します。私たちは、水一滴も自分で作れません。酸素と水素がくっついて水になる仕組みは、人間が生み出したものではありませんし、元素そのものだってゼロから作ることができないのです。
野菜などの種も人間が作り出したものではありません。肉になる動物の命も、精子や卵子そのものや、それらが受精して命が生まれる仕組みも、私たちには想像も及ばないほどの叡智が働いています。なのに人間は、水の権利、種の権利、土(土地)の権利を主張して争っているのです。こんな愚かなことがあるでしょうか。
食育とは、食べ物をいただきながら、こうしたことに思いをはせること、そして日常生活でそれを活かしていくこと、その結果、自分や他者の命そのものを大切にすることなのではないかと思います。食育を通して平和な世界を創っていきたいですね!


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