
「言葉は生きている」なんてよく言います。流行や時代背景に合わせて言葉の持つ意味が自然と変化していきます。なので、昔とは全く違う使い方をする言葉も珍しくありません。
ですが、勘違いや自然の流れとは別に、恐怖心によって、あえて間違えて使うのは、人を幸福から遠ざけるかもしれません。恐怖心は、顔だけでなく言葉にも表れるものですね。二重敬語や語尾に余分にくっつける言葉がその例です。ストレートに言わずに遠回しに言うことでクッションになり、攻撃的な言い方になるのを防ぐことは大事ですが、近年はそれがあまりにも多すぎて、誰も幸せになっていないどころか、みんなを困らせてしまっているように見えます。
わざわざそんな言い方をしないほうが言う人も楽だし、受け取る人も誤解なくスムーズに聞き取れるので、互いにコスパもタイパも気分も良いのです。過剰に丁寧にしなくてもいいような気がします。敬語はシンプルに、言葉は分かりやすいほうが良いと思いませんか?それに、自分の気持ちを大切にするのって、幸せな人が実践していることですよね。
近年目立つちょっとおかしい言葉を挙げてみます。
- 「こちら、〇〇になります」→ 正しくは、「こちらは〇〇です」「こちらは〇〇でございます」ですね。本当に「〇〇になる」ものとの区別がつかきません。ひよこはニワトリに「なります」が、ニワトリも「ニワトリになる」のなら、ひよこなのかニワトリなのか分りませんよね。
- ちょっと → ちょっと何でしょう?ちょっと良いのかちょっと悪いのか、それともかなり良いのか、かなり良くないのか、さっぱり分かりません。外国人が日本語を覚えるときに一番困る言葉がこの「ちょっと」なのだそうです。そろそろ誤魔化さず、自分の気持ちを率直に伝えませんか?
- おっしゃっられる → 二重敬語なので失礼です。また、「言われる(受け身)」の敬語と区別がつきません。
- 好きかも → 好きかどうかは自分で分かるはずです。「好き」とハッキリ言いましょう。
- そうゆう → 正しくは「そういう」です。「そう優」「そう結う」などと区別がつきません。
- いかがでしたでしょうか →「『いかがですか』についてはいかがですか?」という二重のお尋ね?
- 評価する、しない →「評価しない」という「低評価」をしています。
- 助詞抜きの漢文 → (例)「私今日兄と店行った」は、「シキョウケイとテンコウった」とも読めます。SNSでは、こうした難しい漢文のような文章をよく見かけます。せめて「私、今日、兄と店に行った」にすると誤解が少ないのではないでしょうか。
- 敬語として「られる」を多用する → 受け身や可能の意味でも「られる」を使うので、敬語として頻繁に使うと、他との区別がつきません。

左の人は右の人に「殴られた(受け身)」
右の人は左の人を「殴られた(敬語)」
一般的には、殴る人に対して敬語は使わないので、こんな誤解はないだろうと思われるかもしれませんが(ちょうどいいイラストが見つからず、すみません)、「書かれる」「言われる」「行かれる」などになると、もう分りにくくなります。その点、敬語の場合には普段から「〇〇られる」ではなく、「お〇〇になる」ほかの敬語を使っていると区別しやすいのですが(「お書きになる」「おっしゃる」「お出かけになる」など)。
誰にでも記憶違い、間違いはあります。それは、私にもたくさんあります。でも、周りに流されて本当の言葉や気持ちを言えなくなった世の中もおかしなものです。また、せっかく相手を尊重して丁寧にするつもりで使っていても、正反対の効果を与えてしまうのは、とてももったいないことです。

言葉は、誤解がないように、もの、場所、時間などを特定して伝えます。対面、電話、LINEなどのやり取りの場合には、ジェスチャーを使ったり、間のとり方やイントネーションによって、何となく意味を推測することができます。また、その場ですぐに意味を確認できるからまだいいのですが、一方的に発信するこういうホームページ、SNSなどは不特定多数の人が読みます。もし意味がわからなくても、確認せずにそのままスルーされてしまうか、誤解されたまま返信されるかもしれません。そうすると、それが日本中に広まってしまい、意味がきちんと通じていなくて争いの元にもなって社会の調和を乱してしまいます。すると、周り回って発信した私たち自身にリターンしてしまいます。最近のSNSでは、言葉がきちんと伝わっていなくて争っているケースが本当に多いと思います。
特に発達障害の人は、かなり正確に言葉を使うことが多いので、近年の日本語には理解に苦しむことが多いです。店頭の注意書きから始まり、説明書、各企業のホームページ、省庁や政治家の言葉までが意味不明で困ることが増えています。ちょっと使い方を変えるだけで、言葉によるカルマを蓄積するのを防止できます。
言霊を意識して美しい言葉を使う人は増えていますが、伝わる言葉を意識している人は少ないように思います。私もまだまだ未熟ですが、なるべく気をつけていこうと思います。伝わる言葉を使うことは、相手への気遣いですし、それが周り回って自分自身を幸せにするというお話でした。


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